『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』を見ていると、「このセリフ、韓国語ではどんな意味なんだろう?」と思う場面はありませんか?
『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』には、韓国語だからこそ成立する言葉遊びや、韓国の文化を知らないと意味が伝わりにくい表現がたくさん登場します。
日本語字幕でもストーリーは十分楽しめますが、韓国語の元の意味を知ると「そういうことだったの!」と、登場人物のセリフがさらに面白く感じられることもあります。
韓国人の私が見ていて特に印象に残った、日本語字幕だけでは分かりにくい韓国語を7つ紹介します。
この記事では、次のようなことが分かります。
韓国語を知ると、『ウ・ヨンウ』をもう一度見返したくなるかもしれません。
1.「キロギ・トマト・スイス…」は韓国語では全部“回文”
ウ・ヨンウといえば、まず思い浮かぶのが独特な自己紹介です。
韓国語の原文では、
기러기(キロギ)
토마토(トマト)
스위스(スイス)
인도인(インドイン)
별똥별(ピョルトンビョル)
우영우(ウ・ヨンウ)
역삼역(ヨクサムヨク)
と続きます。
実はこれらはすべて、韓国語で前から読んでも後ろから読んでも同じになる言葉です。
たとえば「우영우」は、ハングルを逆から読んでも「우영우」。
「역삼역(ヨクサムヨク)」も同じです。
そのため、ウ・ヨンウがなぜ突然ガチョウやトマト、スイスなどを並べているのかは、韓国語を知らないと少し分かりにくいかもしれません。
Netflixも、この言葉遊びを海外でどう伝えるか工夫しています。
英語字幕では韓国語をそのまま訳すのではなく、「noon」「racecar」「kayak」など、英語でも前から読んでも後ろから読んでも同じ単語へ置き換えられました。
日本語でも同様に、日本語で回文として成立する言葉を使うことで、ウ・ヨンウらしい自己紹介の面白さが再現されています。
単なる変わった自己紹介ではなく、最初から言葉そのものに仕掛けがあるのです。
2.「ウ to the ヨン to the ウ」は実は台本になかった
ウ・ヨンウと親友のトン・グラミが会ったときの、
「우 to the 영 to the 우!」
「동 to the 그 to the 라미!」
という挨拶。
作品を見た人なら、一度は真似したくなったのではないでしょうか。
どんなに急いでいる状況であっても、この挨拶を必ずかわす二人の姿がとてもキュートでしたね!
実はこの挨拶、最初から完成した形で台本に書かれていたわけではありません。
トン・グラミ役のチュ・ヒョニョンさんによると、
台本では当初「ウ・ヨンウヨンウ」「トントン・グラミ」のようなイメージだったそうです。
そこからチュ・ヒョニョンさんが考えたのが、おなじみの「to the」を入れた挨拶でした。
さらに元ネタとして思い浮かべたのが、BIGBANGの楽曲『最後の挨拶』に登場する「B to the I to the G」というリズムだったとインタビューで明かしています。
この曲の冒頭に、「B to the I to the G」という歌詞があります。
つまり、あの名物挨拶はトン・グラミ役の俳優から生まれたアイデアだったのです。
ドラマを代表するほど有名なフレーズになったことを考えると、面白い制作秘話ですよね。
3.「権謀術数クォン・ミヌ」は韓国語だからこそ語呂がいい

ウ・ヨンウを何かとライバル視するクォン・ミヌには、
권모술수 권민우
(クォンモスルス クォン・ミヌ)
というあだ名があります。
「권모술수(権謀術数)」とは、目的を達成するためにさまざまな策略を巡らせること。
まさにクォン・ミヌの行動を表した言葉です。
しかし韓国語で聞くと、意味だけでなく音もポイントです。
권모술수(クォンモスルス)
권민우(クォン・ミヌ)
と、どちらも「권(クォン)」から始まります。
そのため「権謀術数クォン・ミヌ」と呼ぶと非常にリズムがよく、ニックネームのように耳に残ります。
クォン・ミヌ役のチュ・ジョンヒョクさん自身も、インタビューで「権謀術数」という言葉だけで人物像が説明されているように感じたと話しています。
字幕で意味は理解できても、韓国語で聞いたときの語呂の面白さまではなかなか伝わりにくい表現です。
4.「어일우」は「どうせ1位はウ・ヨンウ」
ウ・ヨンウはロースクール時代、
어일우(オイルウ)
というあだ名で呼ばれていました。
これは、
어차피 일등은 우영우
(オチャピ イルドゥンウン ウ・ヨンウ)
を短くした言葉です。
日本語にすると、
「どうせ1位はウ・ヨンウ」
という意味です。
「어(オ)」+「일(イル)」+「우(ウ)」を取って「어일우」です。
IQの高さと抜群の記憶力を持ち、ロースクールを首席で卒業したウ・ヨンウ。
周囲からすると「試験を受けても、どうせ1位はまたウ・ヨンウでしょ」という存在だったわけです。
韓国では長いフレーズの最初の文字や音を取って略語を作ることがよくあります。
日本語字幕では意味を訳すことはできても、「어일우」という短い呼び方がどう作られているのかまでは分かりにくい部分です。
5.ウ・ヨンウが自分を「깍두기(カクテキ)」と呼んだ理由
個人的に、韓国文化を知らないと特に意味が分かりにくいと思うのが、
깍두기(カクトゥギ)
です。
깍두기といえば、韓国料理では角切り大根を使ったキムチーカクテキのこと。
では、なぜウ・ヨンウが突然自分を「カクテキ」に例えたのでしょうか。
実は韓国では、子どもたちがチームに分かれて遊ぶとき、年齢が小さかったり、ゲームがうまくできなかったりする子を勝ち負けとは別枠で仲間に入れることがあり、その子を「깍두기」と呼ぶことがあります。
その呼び名は、キムチ作りで余った大根も捨てずにカクトゥギにするように、遊びでも余った子を仲間外れにせず加えることに由来するという説があります。
完全に仲間外れにするわけではありません。
しかし、ほかのメンバーとまったく同じ条件で扱われているわけでもない存在です。
ドラマの中でウ・ヨンウは、自分が弁護士として働いていても、周囲からは「弁護士ウ・ヨンウ」より先に「自閉症のウ・ヨンウ」と見られているように感じ、自分を깍두기に例えます。
主戦力ではない、けれど捨て駒でもない。
この文化的背景を知ると、ただ「特別扱いされている」という意味よりも、ウ・ヨンウが感じている複雑な寂しさが伝わってきます。
6.イ・ジュノの「섭섭한데요」は日本語に訳しにくい
イ・ジュノのセリフの中で、韓国で大きな話題になったのが、
섭섭한데요(ソプソパンデヨ)
です。
「섭섭하다」は、日本語にぴったり一語で置き換えるのが難しい韓国語です。
「寂しい」「残念」「がっかりした」「ちょっと悲しい」などが近いのですが、単に悲しいという意味ではありません。
相手に少し期待していたからこそ、その期待と違う反応をされて寂しく感じる
というニュアンスがあります。
つまり、あまり関心のない相手には使いにくい言葉でもあります。
イ・ジュノがウ・ヨンウに「섭섭한데요」と言う場面には、
「僕はあなたのことをもっと特別に思っているのに」
という感情がにじんでいます。
カン・テオさんによると、このシーンは微妙な感情の違いを表現するため、10回以上撮影したそうです。
この一言が大きな反響を呼び、韓国ではカン・テオさんが「섭섭남(ソプソプ男)」と呼ばれるほど話題になりました。
韓国語の意味を知ってからこのシーンを見ると、ジュノの気持ちがより伝わってくるのではないでしょうか。
7.キム・ミンシクのおやじギャグは日本語字幕では別物
最後は、韓国語と日本語字幕を比べると特に面白い場面です。
トン・グラミが働く店の社長キム・ミンシク。
チェ・スヨンとのデートで、おやじギャグを連発します。
韓国語では自己紹介から、
김민식입니다람쥐
と言います。
普通なら「김민식입니다(キム・ミンシクです)」ですが、そこへ、
다람쥐(タラムジュィ=リス)
を無理やりつなげたダジャレです。
さらに韓国語では、同じ発音や似た音を利用したギャグが続きます。
こうしたダジャレをそのまま日本語へ直訳しても、何が面白いのか分からなくなってしまいます。
そこで日本語字幕では、韓国語を直訳するのではなく、日本語で成立する別のダジャレへ置き換えられています。
これは誤訳ではありません。
むしろ「この人物がおやじギャグを連発していて、スヨンが困っている」という場面の面白さを伝えるための翻訳上の工夫です。
こういう場面って本当に翻訳するのが難しいので字幕いれた方はさぞかし相当悩んだのではないかと思います。
『ウ・ヨンウ』では、回文だけでなく、こうした言葉遊びについても各国の言語に合わせたローカライズが行われています。
韓国語と字幕を比べながら見ると、翻訳スタッフの工夫まで見えてきて面白いですね。
まとめ|韓国語を知ると『ウ・ヨンウ』はもっと面白い
『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』には、日本語字幕でストーリーを追うだけでは気付きにくい韓国語の仕掛けがたくさん隠されています。
今回紹介したのは、次の7つです。
字幕だけでも十分楽しめる作品ですが、韓国語の意味や文化的な背景を知ると、登場人物の感情やセリフの面白さがさらに深く伝わってきます。
『ウ・ヨンウ』をもう一度見る機会があれば、ぜひ韓国語のセリフにも耳を傾けてみてください。
「あ、この言葉だったんだ!」という新しい発見があるかもしれません。